永遠の旅人日記

好奇心一杯に生きて来た人生。テーマは、女性用バイアグラから橋下徹まで、かなり広範囲。

自民党が農家を保護する理由

昨日のブログで、

自民党が農業を保護するのは選挙対策」と書いた
今日は、このことを説明してみよう。

農業人口は260万人

日本の農業従事者は 約260万人しかいない。日本の総人口のわずか2.1%である。そこで当然の疑問。

たった2.1%で選挙に影響力を行使できるのか?

実はできるんです
そのからくりは以下の通り
まず、先の2.1%といい数値は、全人口に対してだが、選挙に対する影響力を考えるなら、有権者に対する割合、いや総投票数に対する割合に換算する必要がある。
そこで
1.農業従事者=成人有権者 と考える
2.前回の衆院選における投票率は全国平均52.7%だった

これらを考慮した上で、「県別の有効投票数に占める農業従事者数の割合」を計算し、多い順に並べると下記のグラフになる。

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全国平均では、投票総数約5000万に対して農業人口260万人だから、5%にすぎないが、農業従事者は偏在している (例えば、東京都には、人口当たりで0.1%しかいない)ので、上記のいわゆる、農業県において、その比率が高まる。
その結果、岩手県以下、全都道府県の約半数の24県において、農業人口が投票数の7~15%を占める。

当選に必要な得票率

小選挙区(一人区)では、50%を超えなくとも競合が多ければ、45%位でも当選する
比例代表は、大体得票率35%から45%位で当選する人が多い

農業従事者の投票率

勿論 農業従事者が100%投票場に行くとは限らない
しかし、
彼らが高齢である(日本では高齢者ほど投票率が高い)かつ、
自民党から手厚く保護されている(言い換えれば、生活がかかっている)

という現実を考え合わせると、彼らの投票率は著しく高い、と思われる

キャスティング・ボート

農業従事者の持つ票は7%~15%であるが、
40%の得票率があれば少なくとも比例代表での当選が期待できる中で、この7%~15%の重みは相当大きい。
当選の キャスティングボードトを握っている、と言っても良いだろう。

ちなみに、公明党

比例区で約800万票を得ている
自民党からの比例区への協力がある
創価学会の実数が約500万人と推定されている
この選挙における投票総数は約5000万である
などから、公明党も各選挙区で約10%の影響力を持っていると考えられる。

自民党当選者の構造

これらを考えあわせると、一人区で50%の得票率を得て当選した自民党候補者の得票を極端に単純化すると、
自身の支持者 30%
農業従事者 10%
公明党の協力 10%
のような、「構造」で当選していることがわかる
これが、自民党の農業保護は、選挙対策と言った所以である。

小沢一郎の切り込み

余談だが、この「構造」に切り込もうとしたのが、民主党政権時代の小沢一郎である。彼は、農家に対し、個別所得補償を唱えた。
表面上は「TPPに参加する見返り」や「減反に協力する見返り」だとしているが、私はこれは小沢一郎らしい選挙戦略だったと思う。
上記のように、農業県における農家の票はかなりの重みをもつ。もし、戸別補償、という鼻先のニンジンで農家の持つ票を自民党から民主党に変えることが出来れば、出入りで差し引き20%のプラスとなり、ほとんどの農業県でライバルの自民党に勝てるからである。

100人殺せば英雄?

この戸別補償に対して、私は、当時から非常に違和感を抱いていた。
一人に1000円払っても、選挙違反だが、260万農家に何千億円もの”所得補償”をしても選挙違反にならないのは、「一人殺せば殺人だが、戦争で100人殺せば英雄」と同じではないか?
どこかおかしくないだろうか?