永遠の旅人日記

好奇心一杯に生きて来た人生。テーマは、女性用バイアグラから橋下徹まで、かなり広範囲。

そんなバカな!

はじめに

たまたま知り合いに推薦したことがきっかけとなり、竹内久美子氏の
そんなバカな!
を、ほぼ20年ぶりに、読み返した。

そんなバカな!―遺伝子と神について (文春文庫)

そんなバカな!―遺伝子と神について (文春文庫)

生物界の定説となっている、リチャード・ドーキンス博士の唱えた「利己的遺伝子」を易しく解説した本である。

昔、この本を読んで人生観が変わるほどのショックを受けた。
読みおわって「一体、俺という存在は、何なんだ?」という疑問が湧いたことを思い出す。

例えば

  • 何故、親は我が子を助けるためなら火の中でも飛びこむのか?
  • 何故、姑は自分の息子の浮気には甘いのに、嫁の不倫には厳しいのか?
  • 何故、蜜蜂の働き蜂は、あんなにせっせと女王蜂の世話を焼くのか?

等々が 全て「利己的遺伝子」の考え方で説明がつくのである。

利己的遺伝子

この説によると、

  • 生物は、遺伝子が自らのコピーを増やすために作った生存機械に過ぎない
  • 我々のこの「身体」は、遺伝子が自らを乗せるために作った「乗り物」に過ぎない
  • 遺伝子が悠久の時間を旅し、その間にコピーを増やすために我々の「身体」を利用しているだけ
  • 我々の「個体」は、そういう遺伝子がたまたま幾つか乗り合わせただけの、うたかたの存在
  • 個体が死んでも遺伝子は困らない。子から孫、場合によっては兄弟やいとこの身体を借りて、コピーを繰り返すだけ
  • 遺伝子は、時々コピーミスを起こし、それが環境に合えば、突然変異、として華々しくデビューしコピーを増やすことに成功する
  • その結果、多種多様の「生存戦略」が生まれた

という主張である。
極めて大胆で画期的、かつショッキングな説である。
そんなバカな!
と思うかもしれないが、この説は、約40年前に「The selfish gene 利己的遺伝子」という書名で出版され、たちどころに生物界の定説となった。
生物界の数々の奇妙な振る舞いが、この考えで一挙に説明できてしまうからである。

利己的遺伝子で解釈すると

親がわが身を犠牲にしてまでも子供を守ろうとするのは、遺伝子が、「より若くて将来性のある子供の遺伝子を守れ」と指示するから。

姑が息子の浮気に寛容なのは、自分の遺伝子を持った息子がコピー作成に励むのは、姑の遺伝子にとって望ましいことだから。嫁の不倫に厳しいのは、自分と関係の無い遺伝子を持つ嫁が他人のコピーを作った上で息子に世話させるのは、姑の遺伝子にとって許し難いことだから。

おわりに

自分の意思で、と思っていた行動が、実は遺伝子に操られていた!なんてショックです。
「自分の意思って何なんだ」と考え込んでしまいます。
ただ、脳を異常に発展させた人類は、遺伝子に対し反乱も起こしています。避妊具なんてその最たるものでしょう。遺伝子が「さあコピーを」という嬉しいシチュエーションを用意しても、避妊具を使われたら、遺伝子の目論見は無に帰します。
何れにせよ、この本は「生命の本質とは何か?私とは何か?」を問い直す良い機会になると思います。